―「結局、何を入れればいいのか」で止まっている人へ
本レポートは、生成AIのツール選定を始めたものの、議論が煮詰まらず検討が止まってしまっている経営層・情シス・DX推進担当者向けに、AskDona(株式会社GFLOPS)を提供する事業者の立場からまとめた営業視点のドキュメントです。事実と数字に基づき、選定の論点を整理し、最後にAskDonaがどのレイヤーの課題にフィットするのかを示します。
1. なぜ「生成AIツールの選定」はこんなに難しいのか
どの組織も生成AIのツール選定と導入に躍起になっている。経営会議、情シス、現場部門。話せば話すほど結論が出ない。生成AIを過去のデバイスに置き換えて考えるとPCやスマホに近いが、当時もプロバイダーが乱立し、選定は難しかった。Windows 95以降、ノートPCの出荷台数が2000年にデスクトップを上回るまで、企業のPC選定は機種・OS・周辺機器ベンダーを総当たりで比較する作業の連続だった(ノートパソコンの歴史)。スマホもiPhone 3GSが日本で爆発的に普及した2009年前後まで、企業は携帯/PHS/スマホの三つ巴で揺れていた(年代流行・携帯電話の歴史)。
ただし、生成AIが過去のデバイスと決定的に違う点が一つある。それは**「タスク依頼とアクションを同時にこなしてしまう」**ことだ。PCは人が実際に書き、人がメールを送り、人がエクセルに数字を入れていた。スマホでも、営業電話をかけるか/かけないかは人が判断していた。アクションの主体は常に人だった。
ところが生成AI、とりわけ2025年から本格化した「AIエージェント」は違う。ユーザーの一指示の先に複数アクションがあるとき、その手順を自分で設計し、実行までやり切ってしまう。Gartnerも2025年に「AIエージェントは目的に向かって自律的に行動する技術」と整理しているし、ChatGPTエージェントは「経費を申請して」と言うだけで、清算ツールの起動・領収書データの収集・申請フォーマットへの入力までを自走する(ソフトバンク・AIエージェント元年振り返り)。
つまり生成AIは、PCやスマホのように「人の手段を強化するデバイス」ではなく、**「人の業務そのものをハックしうるレイヤー」**として組織に入ってくる。だからこそ、考えれば考えるほど選定がわからなくなる。「これは情シス案件か」「人事案件か」「業務部門案件か」と所掌の議論が始まり、いろんな人の意見が加わり、検討時間だけが伸びていく。最後は「とりあえずChatGPTでいいんじゃない」「Microsoftが入っているからCopilotでしょ」という、意外と短絡的な結論に着地してしまう。
これは選定者が悪いのではない。論点を分解せずに「生成AIツール」とひとくくりにしているから、議論が空転しているだけだ。
2. まずは数字を見る:日本企業の生成AI導入の「現在地」
感覚論で議論する前に、いま日本企業がどこに立っているのかを冷静に押さえておきたい。
2.1 全体の導入率
直近、読売新聞と帝国データバンクが2026年3月に実施した共同調査では、業務で生成AIを「使っている」と答えた企業は34.6%。初めて3割を超えた段階だ(BigGo Finance: Generative AI Adoption Tops 30% Among Japanese Firms)。一方、JUASの「企業IT動向調査2025」によれば、上場企業を中心とした調査対象では言語系生成AIの導入企業(準備中含む)が41.2%で、前年度の26.9%から14.3ポイント急伸している(JUAS企業IT動向調査2025速報値)。
業種別では、社会インフラ60.8%、金融・保険54.4% と、規制と情報量の多い領域ほど積極的だ。Nikkei 225構成企業に限れば、Microsoft 365 Copilotが94%にまで浸透している、という民間集計もある(All About AI: Global AI Adoption)。
ところが中小企業では、全社導入はわずか5%程度、部署単位の限定導入を入れても10%前後にとどまる(MONEYIZM中小企業のAI導入率)。「方針を明確に定めていない」と回答する企業が約半数を占めており、大手の上場企業と中小企業の間で「AI格差」が静かに広がっているのが日本の構図だ。
2.2 国際比較:日本は何位なのか
国際比較に目を転じると、もっと厳しい数字が並ぶ。
| 国 | 企業の生成AI利用率 |
|---|---|
| 中国 | 81.2% |
| 米国 | 68.8% |
| 日本 | 27.0% |
2026年版のグローバルAIアドプションランキングでは、米国(85%超)・中国(80%超)・シンガポール(78%)がトップ3を占め、日本はトップ10の末席にようやく食い込む(Second Talent: Top Countries with Highest AI Adoption Rates、All About AI)。
OECD調査でも、生成AIを使ったことがある個人の割合は日本が30.3%、米国68.8%、中国81.2%で、個人レベルでも倍以上の差がある(OECD調査・個人利用、日経・生成AI個人利用)。
2.3 数字以上に厳しいのは「効果」のほう
PwCが2025年春に米・英・独・中・日の5カ国で実施した実態調査は、より残酷な事実を突きつける。
米・英・独・中の4カ国では、「生成AIで明確な成果を上げている企業」が平均86%。米国に至っては51%が「期待以上の効果」を実感している。一方、日本で「期待以上の効果」と回答した企業はわずか13%。
業務プロセスへの組み込み(契約書チェック等で必ずAIを使う、など正式な業務化)も日本は24%で5カ国中最低。
(出典:PwC: 生成AIに関する実態調査2025春5カ国比較、ITmediaエンタープライズ、ASCII:使ってるのに成果が出ない日本企業)
つまり日本は 「導入率はそこそこ/効果は世界の1/4〜半分」 という、もっとも費用対効果の悪いゾーンに立っている。経営者から「で、結局いくら効いてるの?」と聞かれて答えに詰まるのは、当然なのだ。
3. 「とりあえず大手LLMをばら撒く」アプローチの限界
3.1 まず手が伸びるのは汎用LLMプラットフォーム
最初に検討しやすいのは、大手が出している汎用LLMプラットフォームだ。OpenAI(ChatGPT)、Google(Gemini)、Anthropic(Claude)、Microsoft(Copilot)。実際、2025年は日本国内でも、こうした汎用LLMを PCを支給するかのように全社員にばら撒く 動きが一定数あった。とくにMicrosoft 365 Copilotは、Office 365の延長で稟議が通りやすく、Nikkei 225で94%という普及率まで到達している。
3.2 ところが、肝心の「使われ方」が悲惨
GXOが2025年10月時点でまとめたレポートによれば、Microsoft 365 Copilotの有料ライセンス数は1,500万席を超えたが、実際にワークプレイスで使われている率(ワークプレイス・コンバージョン)は35.8%。有料ライセンスを持つ社員の3人に2人が、ほとんど使っていないことになる(GXO: Microsoft Copilot定着率35.8%の現実)。
ITmediaの2025年版実態調査では、企業内で実際に使われているツールはむしろChatGPT 55.2%、Gemini 15.7% と分散しており、「まずCopilotを入れたが定着せず、別ツールに流れる」現象が起きている(ITmedia: 中堅・大企業でCopilotが逆転トップ)。
定着しない理由として共通して挙げられるのは、
-
データガバナンスへの懸念(自社データをLLMにどう繋ぐかが詰められない)
-
チェンジマネジメント予算の不足(教育・運用に金が回らない)
-
社内AIチャンピオンの不在(業務に翻訳できる人がいない)
の3つで、いずれも「技術」ではなく「組織」の問題だ。
3.3 そもそも汎用LLMは「個人の効率化ツール」である
ここが議論のいちばんの肝だ。OpenAI、Google、Anthropic、Microsoftの出すLLMはすべて、主に個人の業務効率化を推進するツールとして設計されている。タスク依頼の中身も、個人が抱える執筆・コーディング・翻訳・要約・調査といった、1人の業務支援だ。
PCに例えるとわかりやすい。会社が高性能PCを全社員に配っても、PCを使いこなせない人にとっては高機能の意味がなく、業務効率は思ったほど上がらない。むしろ「PCはあるのに紙の書類を回している」状態が温存される。生成AIも同じで、現にLLMの回答はパーフェクトではなく、平気でハルシネーション(架空の事実)も語る。利用にあたってはファクトチェックや適切なプロンプティングが必要で、結局は 個々人の「LLM運用スキル」 に成果が依存してしまう。
PwC調査が「日本だけ価値を引き出せていない」と指摘するのも、結局はここに帰着する。ライセンスは配ったが、業務プロセスとして組み込まれていないから、効果が13%にしかならないのだ(エンタープライズジン: PwC調査3つの対策)。
4. McKinseyが示した「2つのスタック」――HorizontalとVertical、両方が止まっている
「日本だけ効果13%」という数字(PwC)は、単なるリテラシーの差ではなく、AI導入の構造そのものに詰まりがあることを示唆している。それを世界共通の構図として整理したのが、McKinseyが2025年に発表した「State of AI」だ。同レポートは、企業の生成AI導入を**Horizontal(全社横断・広く浅く)とVertical(機能特化・狭く深く)**の2軸で整理し、両方がそれぞれ別の理由でスタックしていると指摘する。
Horizontal(全社横断)のCopilotやチャットボットは普及が速い一方で、その効果は拡散しがちで測りにくい。一方、より変革的なVertical(機能特化)のユースケースは約90%がパイロット止まりである。
(McKinsey: The state of AI 2025、2025年11月版PDF)
Deloitteの「State of AI in the Enterprise 2026」(24カ国・3,235名の経営層/IT幹部を対象)も、**経営層の2/3超が「実験の30%以下しか本番化できない」**と回答しており、PoCを本番運用に渡せない壁が、独立した複数調査で確認されている(Deloitte公式)。
4.1 Horizontal側のスタック:「配ったけど使われない」
Horizontal側、つまりCopilot/ChatGPT/Geminiを全社員に配るアプローチは、確かに速く展開できる。日本でもNikkei 225企業の94%にMicrosoft 365 Copilotが浸透した。だが3章でみたとおり、定着率は35.8%、有料席の3人に2人が眠っている(GXO)。日本企業全体では、PwC 5カ国比較で**「期待以上の効果」を実感する企業はわずか13%**(PwC)。
McKinseyが言う「diffuse, hard-to-measure gains(拡散して測れない効果)」とは、まさにこの状態だ。配布は速かった。しかし業務プロセスへの正式な組み込みは日本で24%(PwC、5カ国中最低)にとどまり、ライセンスは生きない。
4.2 Vertical側のスタック:「PoCはやったが本番化しない」
Vertical側、つまり機能・部署単位で深いユースケースを作るアプローチは、約90%がパイロット止まりになる(McKinsey)。同レポートが繰り返し挙げる、生成AIの利用が多い機能トップはほぼ固定で、
IT/ナレッジマネジメント/マーケティング・セールス/製品・サービス開発/サービスオペレーション(カスタマーサポート)/ソフトウェアエンジニアリング
の6領域である(McKinsey: How organizations are rewiring to capture value)。これらの機能で、各社が深いユースケースを試している。代表的な例は次のとおり。
-
IT・情シスの社内ヘルプデスク ―― 経費精算、アカウント発行、PCトラブルなど、毎日同じ質問が人事・総務・情シス・経理を往復する。FAQを整備してもまずSlackで人に聞かれる。
-
カスタマーサポートの一次対応 ―― 製品仕様やFAQに基づく即時回答。理研「富岳」のサポートで、AskDonaが1件最大4時間→5秒にした事例はこの典型。
-
ソフトウェアエンジニアリング ―― コード生成・レビュー、内部ドキュメント参照、障害調査。McKinseyではコスト削減効果が最も顕著な領域として挙がる。
-
マーケティング・セールス ―― 提案書・コピーの初稿生成、過去案件・製品仕様の参照、競合情報の整理。McKinseyでは売上効果が最も顕著な領域。
-
法務・コンプライアンス ―― NDA条項・準拠法・損害賠償上限など約50項目のチェックリストを毎契約レビューで確認、ベンダー評価、システムリスクアセスメント。McKinseyの “Risk & Legal” / “Knowledge Management” にまたがる、典型的な定型評価業務。
-
ナレッジマネジメント(規程・マニュアル参照) ―― 就業規則、経費規程、情報セキュリティ規程、コンプラ規程といった規定類の伝達。評価ガイドラインや等級定義の運用。製品マニュアル・業務マニュアルの検索。
これらの領域では、リコー、NEC、ブレインズテクノロジー等が共通して指摘する**「文書はあるのに使えない」**問題が常態化している ―― 「資料は確かにあるが必要なときに見つからない」「詳しい人に聞かないと分からない」「キーワード一致の社内検索は暗黙知や意図を汲み取れない」(リコー、NEC、ブレインズテクノロジー)。
これを解く理屈はもう知られている。RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)で社内文書をLLMに参照させればよい。しかしPoCで精度83%・90%の数字を出しても、いざ本番運用に渡すと、文書の不備(46%)/検索精度(42%)/アクセス制御/改訂運用/社員の利用導線で躓く(キヤノンITソリューションズ:RAG導入で社内検索はどう変わったか)。McKinseyの「Vertical 90%がパイロット止まり」とは、まさにこのPoCから本番運用に渡すフェーズで詰まる現象を指している。
4.3 日本企業の現在地:「横で薄く、縦で止まっている」
つまりMcKinsey/Deloitte/PwCの三つを重ねると、日本企業の構造はこう要約できる。
| レイヤー | 状態 | 数字 |
|---|---|---|
| Horizontal(全社配布のCopilot/ChatGPT) | 配布は進んだが、定着・効果が出ない | Nikkei 225で94%配布 / 定着35.8% / 期待以上の効果13% |
| Vertical(機能特化の深いRAGユースケース) | PoCはやるが本番運用に渡らない | 約90%がパイロット止まり(McKinsey)/ 30%以上スケールできた経営層は1/3未満(Deloitte) |
両方が、別の理由で同時に詰まっている。汎用LLMをばら撒くだけでHorizontalの効果は深まらないし、Vertical PoCを走らせるたびに社内データ接続・モデル選択・セキュリティ要件・運用設計をゼロから組み直していたら、本番にたどり着く前に予算もタイムラインも尽きる。
ここにAskDonaが応える余地がある。
5. それで、AskDonaは何を解くのか
ここまで整理した論点に対し、AskDona(株式会社GFLOPS)は、Horizontal層(個に配るセキュア法人ChatGPT)とVertical層(機能特化の深いユースケース)を、ひとつのプラットフォームに収束させるプロダクトとして位置付けられる。McKinseyが指摘した2つのスタックを、別々のベンダー・別々の運用で解こうとせず、同一基盤・同一ガバナンス・同一UIで解く設計思想である。
5.1 プロダクトの全体像 ―― 4つの主要機能
AskDonaの中核には、理化学研究所と創業期から共同検証を重ねて開発・最適化された独自RAG技術がある。Google出身のメンバーが起点となり、次世代AI技術であるRAGの社会実装を理研と並走で進めてきた経緯が、現在のプロダクトの技術的なバックボーンになっている(AskDona公式、GFLOPSプレスリリース)。提供機能は2系統ではなく、現時点で4つの主要機能まで広がっている。
-
RAGチャット ―― 社内ナレッジに対し、複数のAIエージェントを連携させて高精度な回答を生成する中核機能。一次情報参照機能で、回答の根拠となった元ファイルをその場でプレビュー可能(PDF対応、2025年9月以降はOfficeファイルにも対応予定)。ハルシネーションを抑えるために最も重要な「根拠の透過性」が、UIに組み込まれている。
-
GPTチャット ―― 汎用LLMアシスタント。gpt-4o に加え、2025年5月23日にClaude Sonnet 4が追加され、質問回数無制限で利用可能。よく使うプロンプトをテンプレートとして保存・再利用できる。社員が「個」として使う層に対応。
-
RAG × Deep Research(日本初) ―― 5つの異なる役割を持つAIエージェント(リサーチャー、アナリスト等)が、社内データに対して自律的・再帰的に調査を実行し、構造化されたレポートを生成する先進機能。検索ではなく、調査・分析・要約を一気通貫で代行する。
-
Batch Assessment(プロ機能) ―― 数百〜数千項目の評価を一括で自動判定する機能。コンプライアンスチェック、ベンダー評価、システムリスクアセスメント、新人オンボーディングのチェックリスト等。アセスメントは8ステップのウィザードで作成でき、結果は判定・コメント・引用元と共にExcel形式で出力できる。
つまりAskDonaは、もう「セキュアな法人ChatGPT+社内RAG」ではない。**「検索(RAGチャット)→ 調査(Deep Research)→ 評価・判定(Batch Assessment)」**という、ナレッジ活用の上位レイヤーまでをひとつのプラットフォームでカバーしている。
5.2 数字と仕様で見るAskDonaの強み
-
主要なRAGフレームワークに対し、複雑な質問の回答精度で +16〜28.9 ポイント上回る(理研との共同検証で実証)
-
データ量が膨大になっても回答精度が低下しにくい設計 ―― エンタープライズ規模の社内文書を扱ううえで決定的に重要
-
セマンティックチャンキング(文字数ではなく意味のまとまりで分割)とメタデータ付与(タイトル・作成日・URL等)により、検索と参照の両方の精度を底上げ
-
マルチLLM対応:ChatGPT/Azure OpenAI/Gemini/Claudeを業務ごとに使い分け可能。OpenAI一社ロックインを回避
-
対応ファイル形式:PDF/Office(Word・Excel・PowerPoint)/CSV/TXT/HTML/Markdown/JSON/画像(PNG・JPG)/公開Webページ
-
セキュリティ:ISO/IEC 27001:2022(ISMS)認証取得(AT Press)/TLS転送暗号化+AES-256保管暗号化/全データを日本国内データセンターで保管/入力データはLLMの学習に一切利用されない
-
アクセス制御:「管理者」「メンバー」の基本ロールに加え、機能単位のカスタムロールを作成可能(最小権限原則)
-
IP制限:IPv4/IPv6/CIDR表記に対応。社内ネットワーク・拠点ベースの制御が可能
-
監査ログ:追加・削除・更新・ダウンロード等のすべての重要操作を時系列で追跡。コンプライアンス監査に対応
5.3 代表的なユースケース
(a) 全社カスタマーサポート/ナレッジ参照(理研「富岳」)
理化学研究所では、スーパーコンピュータ「富岳」のユーザーサポートにAskDonaを導入し、1件あたり最大4時間かかっていた一次対応が5秒に短縮された(GFLOPS / 理研プレスリリース、PR TIMES)。McKinseyが指摘した「Vertical 90%パイロット止まり」を超えて本番運用にスケールしている希少な日本国内リファレンスである。
(b) 法務:契約書レビューの一括化(Batch Assessment)
法務担当者は新規契約のたびに、NDA条項・準拠法・損害賠償上限・反社条項など約50項目のチェックリストを確認している。Batch Assessmentでは、契約書PDFをRAGデータベースにアップロードし、Excelで定義したチェック項目を流すだけで、AIエージェントが「条項あり/条項なし/要確認」を自動判定する。担当者は「条項なし/要確認」だけにレビューを集中でき、作業時間と見落としリスクを同時に下げられる。
(c) 人事:オンボーディングと定点観測(Batch Assessment)
新入社員向けオンボーディングチェックリストを部門ごとにフィルタして適用したり、同じアセスメントを四半期ごとに再実行して業務の変化を定点観測する使い方が可能。教育・研修プロセスの標準化と進捗管理を、属人化させずに回せる。
(d) 社内規程・マニュアル・FAQの全社参照(RAGチャット)
就業規則、経費規程、情報セキュリティ規程、コンプラ規程、製品マニュアルなどをRAGデータベースに集約。「インサイト」ページで、ユーザーフィードバックや「AIが回答できなかった質問」を分析でき、ナレッジベースを継続的に改善できる。「共有セッション」機能で、優れたチャットのやり取りやプロンプトをチーム内で再利用可能。
(e) RAG × Deep Research:調査・分析の代行
複数のAIエージェントが社内データを再帰的に深掘りして調査レポートを生成。市場分析、過去案件の傾向把握、製品比較資料の初稿作成など、これまでアナリストが何時間もかけていた作業をプラットフォーム上で完結できる。
(b) と (c) と (e) は重要な差別化点で、検索ではなく**「調査・分析・評価」という意思決定支援の領域にAskDonaが踏み込んでいることを示している。McKinseyが「Vertical 90%パイロット止まり」と指摘した領域の多くは、まさにこの「PoCでRAGまでは作れるが、評価・判定や深掘り調査までは届かない」局面で詰まっている。AskDonaはそこを機能としてはじめから内包している**。
5.4 「とりあえずCopilotを入れた」企業に対するメッセージ
ここまでを踏まえると、検討が止まっている企業に対するメッセージはこうなる。
汎用LLMの全社配布(Horizontal)は、個の効率化には効く。ただし定着率35.8%が示すように、配るだけでは半分以上が眠る。
一方で、機能特化の深いユースケース(Vertical)は、PoCは走るがMcKinseyによれば約90%が本番運用に到達しない。理由は、社内データの接続・運用・セキュリティ・評価ロジックをPoCごとにゼロから組み直しているから。
AskDonaは、Horizontal(GPTチャット)とVertical(RAGチャット/Deep Research/Batch Assessment)を同じプラットフォーム・同じガバナンス・同じUIで提供することで、PwCが指摘する「日本だけ業務組み込みが24%」という弱点を、機能・運用・セキュリティごと埋めにいくプロダクトである。
理研「富岳」の事例(4時間→5秒)が 「Verticalでも本番運用に到達できる」 ことを、Deep ResearchとBatch Assessmentが 「検索を超えて意思決定支援に届く」 ことを、それぞれ示している。
6. 選定で立ち止まっている人への、3つの整理軸
最後に、検討が煮詰まらない人が「論点を切り直す」ための3つの軸を提案しておく。McKinsey/Deloitte/PwCの3調査と整合する形で並べる。
第一に、Horizontal(広く配る)とVertical(深く特化させる)を分けて考える。汎用LLM(ChatGPT/Copilot/Gemini/Claude)の全社配布議論はHorizontal側、ヘルプデスク/カスタマーサポート/規程参照といった機能特化のRAG議論はVertical側。McKinseyが示すとおり、詰まる理由がそれぞれ違う(Horizontalは効果が拡散、Verticalは90%パイロット止まり)。同じ会議で混ぜると必ず空中戦になる。それぞれ別の指標・別の責任者で進めるのが先決だ。
第二に、「ライセンス配布」と「業務組み込み」を分けて測る。配布数(席数)はもうKPIではない。PwC調査が示す通り、業務プロセスにどれだけ正式に組み込めたか(日本平均24%、米国は倍以上)が、効果に直結する。McKinseyの「Horizontalは普及しているが効果が拡散する」も、Deloitteの「実験の30%以下しか本番化しない」も、結局はこの「業務組み込みKPI」の話に集約される。
第三に、「アクションを伴うAI」を許容する範囲を、先に決めておく。生成AIはエージェント化が進み、PC・スマホのように「人がボタンを押す」前提が崩れていく。社内データへのアクセス権、外部APIの呼び出し権限、最終承認のワークフローを、ツール選定の前に決めておくと、選定そのものが速くなる。
7. まとめ
生成AIツールの選定が進まないのは、選定者が悪いのではなく、論点が Horizontal(広く配る)/Vertical(深く特化させる)、ライセンス配布/業務組み込み、ツール/アクション権限 という3軸で混ざっているからだ。
日本企業はいま、導入率は3割超え/効果実感は世界の1/4〜半分という、費用対効果の悪いゾーンに立っている。McKinsey 2025はその構造を明快に示した:Horizontal側は普及が速いが効果が拡散し、Vertical側は約90%がパイロットで止まる。Deloitteも経営層の2/3超が「実験の30%以下しか本番化できない」と回答する。日本は両方のレイヤーで同時に詰まっているのが現在地だ。
AskDonaは、Horizontal層(GPT=個に配るセキュア法人ChatGPT)とVertical層(RAG=機能特化の社内ナレッジ参照)を同じプラットフォームに統合し、「配るだけ」と「PoCで止まる」の両方の罠を、一つの基盤で潰すことを設計思想としたプロダクトである。理研・富岳の事例(4時間→5秒)は、Vertical側を本番運用にスケールさせた数少ないリファレンスとなっている。
検討が止まっているなら、まず**「うちはHorizontal側で詰まっているのか、Vertical側で詰まっているのか、それとも両方か」**を切り分けてみてほしい。両方なら、別々のベンダーで二重に基盤を組むより、ひとつのプラットフォームでHorizontalとVerticalを回せる構成の方が、運用・ガバナンス・コストのいずれでも有利になる。AskDonaは、その整理を一気に進められる、現時点で数少ない選択肢の一つだ。
参考文献・出典
国内動向・統計
国際比較
グローバル調査(McKinsey/Deloitte)
-
McKinsey: The state of AI in 2025 — Agents, innovation, and transformation
-
McKinsey: The state of AI — How organizations are rewiring to capture value
Copilot/LLM定着の課題
AIエージェント・RAG関連
AskDona/GFLOPS
-
社内資料:『AskDonaプラットフォームの機能と特徴に関する体系的分析レポート』(2026年5月8日、リサーチアナリスト作成。RAGチャット/GPTチャット/RAG × Deep Research/Batch Assessment/セキュリティ仕様/法務・人事ユースケースの一次情報源)
-
社内資料:『2025-06 (正) AskDona管理者向けオンボーディング資料』
PC・スマホ普及の歴史(参考)
本ドラフトはv3版です。元の原稿の論旨(PC・スマホとの違い、汎用LLMの限界、機能特化課題、AskDonaの位置付け)に沿いつつ、第4章以降を McKinsey 2025のHorizontal / Vertical枠組み に揃え、第5章は AskDona詳細レポート(2026年5月8日) をもとにRAGチャット/GPTチャット/RAG × Deep Research/Batch Assessmentの4機能と具体的なユースケース(理研、法務、人事、ナレッジ参照、調査代行)を反映して再構成しました。読み返したうえで、追加したい主張・削りたい数字・差し替えたい事例があれば反映します。