公開日
2025/08/01
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2025年、生成AI市場の成長スピードと技術革新。企業が懸念するセキュリティ対策とROIについて
2025年、国内の生成AI市場規模
生成AI市場の急速な成長は、もはや一部の研究者の技術ではなくなり民間企業、個人にも幅広く活用される技術として浸透していきています。市場調査会社IDC Japan(https://my.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ52722724)が発表したデータによると、2024年、国内の生成AI市場規模は1,016億円に達し、初めて1,000億円を突破すると予想しています。
さらに注目すべきは、この市場の成長が一過性のブームにとどまらず、2023年から2028年までの年平均成長率(CAGR)は84.4%という驚異的な数字が予測されています(IDC Japan)。IDC Japanによると、このペースで拡大を続ければ、2028年の生成AI市場規模は約8,028億円に達すると見込まれています。毎年ほぼ倍近く市場が拡大し続けるこの成長率は、かつてのインターネット黎明期やスマートフォン普及期にも見られたような急激な拡大パターンです。
生成AIが単なる業務効率化ツールとしての役割を超え、企業活動全般を支える重要なプラットフォーム技術、いわゆる「汎用目的技術」として社会に深く浸透していくと、市場規模は拡大の一途を辿りることが予想されます。このように、生成AI業界の市場規模は、技術分野としては異例とも言えるスピードで経済的な存在感を示していますが、この背景には、2022年後半以降の大規模言語モデル(LLM)の急速な性能向上と普及が挙げられます。
2024年9月12日に OpenAI が発表した最新推論モデル「OpenAI o1」のローンチは、私たちが AGI(汎用人工知能)に一歩近づいたことを示す画期的な出来事となりました。o1 は ARC-AGI-1 ベンチマーク※で従来モデルを大きく上回るスコアを記録し、AGI への飛躍的な前進を印象づけています。また、従来の GPT-4 系を凌駕するとともに、後続モデルの o3-mini や o4-mini と比較しても価格性能比が大幅に向上しています。
※ARC Prize Foundation は AGI 開発の加速を目的とする非営利団体で、2024 年に総額 100 万ドルの賞金を懸けた「ARC Prize(AGI グランドチャレンジ)」を創設しました。同財団が独自に設計した ARC ベンチマーク、特に ARC-AGI-1 は「人間並みの抽象的推論能力を持つ AI」を客観的に測定する指標として世界的に注目を集めています。

OpenAI の o3 モデルは、2024 年秋にリリースされた o1 モデルを ARC-AGI-1 ベンチマークで約 20% 上回っています。画像:ARC Prize Foundation(https://arcprize.org/blog/oai-o3-pub-breakthrough)
市場成長を牽引する四つの技術
現在の生成AI市場の活況と今後の進化は、中核をなすいくつかの生成AI技術によって支えられています。
1.大規模言語モデル(LLM)の進化と多様化:
生成AIの中核をなす大規模言語モデル(LLM)は、性能向上とともに多様化が進んでいます。国内でも日本語のニュアンスや文化的背景を理解する「国産LLM」の開発が活発になってきており、軽量でタスク特化型の「SLM(Small Language Model)」へのニーズも高まっています。SLMが浸透すると、スマートフォンなどの端末上で動作する「オンデバイスAI」の実現が進み、プライバシー保護やオフライン環境での活用といった新たな可能性が広がっています。
2.RAG(検索拡張生成)による社内情報活用の促進:
RAGは、外部情報をリアルタイムで検索し、それを基にLLMが回答を生成する仕組みです。これにより、LLM単体では対応が難しい社内データを活用できるようになり、正確性と信頼性が大幅に向上します。
当社(株式会社GFLOPS)は創業期からRAGの検証を重ねており、理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」から得た知見をもとに、ハルシネーションの抑制や回答精度向上に取り組んできました。2023年当時はLLMの性能が不十分で、RAGを用いても精度の高い回答が得られない場面も見られましたが、2025年現在では、LLMの性能向上とRAGアーキテクチャの進化により、複数のAIエージェントがクエリを多角的に処理する構造が整い、飛躍的な精度改善が立証されています。詳細はレポートより(https://askdona.com/askdona-riken-report/askdona-fugaku-04)。
今ではRAGは単なるハルシネーション抑制技術ではなく、ナレッジカットオフの課題を補完し、企業が社内データを活用して生成AIを実務適用するための中核技術となっています。特に、信頼できる外部情報源を活用して誤情報の拡散を防ぐほか、パーソナライズされた業務回答の生成を可能にし、企業の業務効率化を支えています。
3. AIエージェントによる自律的タスク遂行:
AIエージェントとは、ユーザーの指示に対する単純な応答に留まらず、目標達成のために自律的に計画を立て、ウェブ検索、アプリ操作、他のAIとの連携など、複数のステップを自動実行する技術です。
例えば、「来週の大阪出張を計画して最適なフライトとホテルを予約して」といった曖昧な要望にも対応し、カレンダー確認から予約完了までを自律的に実行できます。Salesforceの調査では、日本のITリーダーの92%がAIエージェントの導入済みまたは2年以内の導入を計画しており、業務プロセスの自動化と働き方改革の両面で大きな変革が期待されています。
4.マルチモーダルAIの実用化:
マルチモーダルAIは、テキスト、画像、音声、動画など複数のモダリティを統合的に処理するAI技術です。これにより、応用範囲は大幅に拡大します。例えば、製品設計図(画像)と仕様書(テキスト)を同時に解析して改善提案を行ったり、音声での顧客問い合わせに対して関連するマニュアルを検索・参照しながら回答を生成することが可能になります。Gartnerは、2027年までに生成AIソリューションの40%がマルチモーダル対応になると予測しており、今後さらに注目されることが予想されます。
これらの4つの技術は、互いに連携・融合することで生成AIの能力を指数関数的に高めており、2025年以降の市場成長と産業変革を牽引する原動力となるでしょう。
生成AIツール導入企業と「キャズム」の存在
ICT総研の調査(https://ictr.co.jp/report/20250702.html/)によると、日本の法人領域における生成AIの導入が急速に拡大しており、2023年末時点で約24.7万社であった生成AI導入済み企業数は、2025年末には41.3万社、さらに2027年末には59.2万社にまで増えると予測されています。このデータは、毎年約8万から10万社の新たな企業が生成AIの活用を開始する勢いであり、技術が先進企業からより幅広い層へと浸透していくことを明確に示しています。さらに裏付ける根拠として、矢野経済研究所の調査(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3783)では、生成AIを活用している企業の割合が2023年の9.9%から2024年には25.8%へと、わずか1年で2.6倍に急増しているというデータも存在します。
生成AIが急速に普及する背景には、ツールの成熟化とアクセシビリティの大幅な向上があります。従来のAI導入は高度な専門知識と多額のコストが必要でしたが、現在では月額数千円で利用可能なSaaS型生成AIサービスが多数登場し、IT専門部署を持たない中小企業や非IT系企業でも導入の心理的・経済的障壁が劇的に下がりました。
一方で、この普及の急速さとは対照的に、日本企業には依然として根強い慎重論が存在しています。ICT総研(https://ictr.co.jp/report/20250702.html/)の2025年調査では企業の46.2%が生成AIを「導入予定はない」と明確に回答しており、導入済み(24.4%)および導入検討企業(7.4%)を合わせた割合よりもはるかに多く、日本企業社会には明確な「キャズム」が存在しています。
この慎重姿勢の主な要因は、セキュリティやプライバシーに関する懸念です。特に金融業や製造業など機密情報や個人情報を扱う企業は、重要データを外部のクラウドサービスに預けることに強い抵抗感を抱いています。また、費用対効果(ROI)の不透明性や、生成AIを活用できる人材の不足、具体的な活用方法が不明確であることも大きな課題となっています。
さらに深刻なのは企業規模による導入格差、「AI格差」の存在です。JUASの調査(https://juas.or.jp/cms/media/2025/02/it25_2.pdf)によれば、従業員1万人以上の大企業では92.1%が生成AIを活用または実証実験を行っているのに対し、100人未満の企業では47.7%にとどまり、「全社的に活用している」割合も大企業では73.7%、中小企業ではわずか9.2%と顕著な差があります。
この導入格差は日本経済全体の競争力を低下させるリスクを含んでおり、大企業だけがAIの恩恵を享受し、中小企業が旧来のプロセスに留まるとサプライチェーン全体にボトルネックが発生しかねません。この課題を解消するためには、政府や企業が中小企業向けのAI導入支援プログラムや補助金制度を充実させ、全ての企業が生成AI導入のメリットを享受できるよう支援することが急務です。これが今後の日本経済の持続的成長を実現するための重要であることが伺えます。
セキュリティへの懸念と費用対効果(ROI)の不透明性
なぜ国内の半数近くの企業が生成AIの導入に踏み切れないのか。その根本的な理由は、「データ主権の喪失」への懸念に基づくセキュリティリスクと、「投資対効果の不透明性」にあります。
セキュリティへの懸念
懸念の一つは、情報漏洩のリスクです。SaaSの利用が広がる一方で、生成AIに限らないセキュリティインシデントも増加しており、CSAジャパンの調査(https://www.cloudsecurityalliance.jp/site/wp-content/uploads/2023/08/SaaS-Security-Survey-Report-2024-2_J.pdf)によれば、セキュリティ担当者の55%が過去2年間にSaaS関連のインシデントを経験とされています。また、現在のSaaSのセキュリティ戦略や方法論は十分とは言えず、SaaSアプリケ ーションの50%以下しかカバーしていないと推定していることが判明しているとしています。生成AIについては、OpenAI社のChatGPTがリリースされた当初、サムスン電子のエンジニアがChatGPTに機密情報を入力し、外部サーバーに保存されてしまった事件は、現時点ではリスクは低減されたとしても日本企業にも強い警戒を与えたことは間違いないでしょう。
もう一つの大きな懸念は、データの二次利用に対する不安です。AIモデルの学習に自社のノウハウが利用され、結果的に他社の性能向上に貢献してしまうのではないかという疑念は根強くあります。さらに、法規制とコンプライアンスの問題も無視できません。2024年5月21日、生成AIを含む包括的なAIの規制である「欧州(EU)AI規制法」が成立し、8月1日に発効となった、EUのAI Actのように、AIの利用に関する規制は強化されることが予想されます。また、各国のデータ保護法(データレジデンシー要件)も厳格化しており、国外にデータを保存すること自体のリスクが高まっています。Gartner(https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20231115-cloud)が注目する「ソブリン・クラウド」への関心の高まりも、こうした背景によるものです。ソブリン・クラウドとは、特定の国や地域内でデータが保存・処理され、その国の法律や規制に準拠するクラウドサービスです。
多くの企業はパブリッククラウドで提供される汎用的な生成AIサービスに対して構造的な不信感を抱いています。そのため、セキュリティ機能の訴求だけでは不十分であり、企業がデータの保管場所や管理権限を完全にコントロールできるオンプレミスやプライベートクラウドといった選択肢の提供が重要とされています。
費用対効果(ROI)の不透明性
セキュリティ懸念の他に「費用対効果(ROI)の不透明性」という、もう一つのハードルが存在します。JUASの『企業IT動向調査2025』速報(https://juas.or.jp/cms/media/2025/02/it25_2.pdf)では、生成AIの導入効果について「効果測定を行っていない」と回答した企業が59.8%で最多でした。これは、多くの企業が効果を感じつつも、ROIの測定体制が未整備である実態を示しています。また、業務効率化や創造性の向上、意思決定の迅速化といった効果は直感的に理解できても、金額に換算するのが難しいため、経営判断の材料になりにくいという課題も健在化しており、生成AI導入担当者の負荷が高いことも導入時の課題として上がってきています。
JUASによるとでは、生成AI導入企業の59.8%が「効果測定を行っていない」と回答し、効果測定の実施でも「削減できた労働時間の測定」32.8%が中心でした。「導入効果あり」自体は73.2%に上る一方で、「期待した効果はまだ得られていない・わからない」も26.8%存在し、投資判断に耐える“金額換算”まで落とし込めていない現場の難しさが浮き彫りになっています。
なお、AI運用には継続コスト(モデル維持・追加学習、運用監視や体制整備〔いわゆる LLMOps〕、さらに従量課金APIの利用料管理など)が伴います。投資判断では、導入費だけでなく運用費(OPEX)と効果測定の仕組みまで含めて設計することが重要です。生成AIのROIの算出にあたっては、現場の担当者任せや提案を待つ姿勢ではなく、時に人材の配置やコストカットなど難しい判断についても経営者層が共に中長期的なROIを考えて主導することが求められています。
今後生成AIを導入する事業者に求められる体制
企業がデータの保管場所や管理権限を完全にコントロールできるオンプレミスやプライベートクラウドといった選択肢が求められると前述で記載をしておりますが、Gartner の調査ではオンプレミス投資意欲が 2020 年の 11%から 2023 年には 18%へ増加したと報告されていたりと一部の企業では、オンプレミスへの検討が進んでいることが伺えます。しかし、実際には、GPU サーバーや冷却設備への巨額 CAPEX、LLMOps・セキュリティ人材の恒常的な OPEX、半年ごとに更新されるモデルやオーケストレーション技術への追従といった三重の負担がのしかかり、「所有=安心」の単純な図式では企業競争力を保てません。求められるのは、所有よりも最適な利用——すなわち AI 進化のスピードを取り逃さず、セキュリティと ROI を両立させる柔軟な運用体制です。
AskDona は SaaS 型でありながら、ISO/IEC 27001:2022 取得、国内リージョン限定保管、TLS 1.3/AES-256 暗号化、Row Level Security、Zero Trust、OTP・IP 制限、24/365 SOC 監視、監査ログ長期保全を標準装備し、クラウド利用に伴う不安を徹底的に払拭します。また、ユーザーのクエリやファイルを基盤 LLM の追加学習に一切使用しない方針を規約で明示し、モデルも非学習 API 専用プランに限定。こうして「クラウド=リスク」という固定観念を覆したうえで、AI エージェントを組み合わせた Deep Research や Agentic RAG など最新オーケストレーション機能をクラウド側に集約し、オンプレでは困難な月次ペースでのモデルアップデートと RAG パイプライン改良を迅速に享受可能にしています。さらに理化学研究所との共同研究で磨いたドメイン適応技術を活かし、社内ファイルのメタデータ自動生成や多言語セマンティック分割など日本企業の実務課題に直結した最適化を実装——これこそが AskDona の真の競争優位であり、企業が「最適な利用」を実現するための強力な後ろ盾となります。
さらに当社は、将来的に Docker ベースのセルフホステッド版 を提供し、お客様のクラウドやオンプレミス環境に AskDona スタックを自在に展開できる “ハイブリッド AI” を構想しています。これにより、自社データを外部に持ち出さず情報漏えいリスクとデータ転送料を同時に最小化しつつ、既に社内で運用している大規模言語モデルとも柔軟に連携可能です。課金体系はクラウド版と同一のサブスクリプション(月額+従量)を維持し、ライセンス費用が環境によって変動しない設計とするため、数千万円規模の GPU サーバー CAPEXや毎年膨らみがちな LLMOps・セキュリティ要員 OPEXを抱え込む必要がありません。またコンテナイメージには最新 RAG パイプラインや Deep Research エージェント群をプリインストールしており、モデルアップデートは当社が継続提供するパッチを適用するだけで済むため、オンプレ特有のリプレース費用を年単位で数分の一に圧縮できます。加えて、当社に蓄積された生成 AI ノウハウを反映した新機能に即時アクセスできるため、企業は自前で数千万円規模の追加開発を行わずとも最先端の AI ケイパビリティを取り込み、コストを可視化・平準化しながら本来のビジネス価値創出に専念できます。
ご関心あるかたは、無料ご相談を受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。
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